始めに
視聴者さんなどから頂いた質問についての答えを書いていきます。学究についてのものに限ります。随時更新します。
コンテンツ
映画史や理論についての入門書はありますか?
映画史では村山匡一郎ほか『映画史を学ぶ クリティカル・ワーズ』、四方田 犬彦『日本映画史110年』、中条 省平『フランス映画史の誘惑』は値段も手ごろで入手しやすく間口が広いです。
コードやモード、モンタージュの技術的な分析や理論では、『映画技法のリテラシー』『映画技法完全リファレンス』が比較的いいです。
『イタリア映画史入門 : 1905-2003』、杉野ほか『アメリカ映画史入門』も映画史ではいいですが、手に入りにくいし高いかもです。
ただ日本語で読める映画研究本は微妙なのが多くて、ジャンル研究で参照にするのは、英語圏の著作のほうがいいです。
科学哲学についての学習指南
一般に分析哲学って、包括的な入門書が少なくて、科学哲学も調べても①「古代からの真理論〜論理実証主義〜現代主流の道具主義、プラグマティズム、半実在論的スタンス」みたいな初学者向けの科学哲学概説史(野家先生とかの)、②主要な論点についての概説書、③最新の議論について論点を絞って今日的関心につなげた入門書(戸田山先生とかの。時間論はこの手のが充実しているかも)、みたいなのばかりで、それ(特に①②)を消化したらどうすればいいのかな、みたいなところで質問されているのかな、って思います。
そうなるとカートライトとかハッキングとかパトナムとかデネットとかフラーセンとか、個々の論者の著作に手を付けていく感じだと思いますよ。自分もカートライトとかは邦訳がないので英語で自動翻訳などを使いつつ読んでいますが正規の訓練を受けた感じではないです。 あと”The Routledge Companion to Philosophy of Science”とか、日本のより包摂的な入門書、概説書とかも読んでいますが、これも最新の情報には配慮が至らないところがあります。
ただ科学哲学は分析哲学や自然主義哲学のなかのサブジャンルなので単体で完結しないので、科学哲学の入門書とかだけ当たっていると限界があって、『言語哲学大全』とか分析哲学のちょっとハードなやつとかワードマップの現代形而上学などのもっと平易なやつとか、あとはメタ倫理、医療倫理、認識論、行為論、意味論、心の哲学、プラグマティズム、統計学の理論系のやつ、日常言語の哲学など、科学哲学、真理論と重なったり、方法や問題意識を共有するジャンルの著作や概説書、入門書、個々の論者にもあたらないと、包括的な視野から精緻な立場を組むのが難しいと思いますよ。
古典を挫折しないコツと通史的理解の方法は?
古典を読むと挫折しないコツは事前にあらすじなどを他の文献で調べてから読むとか、翻案作品に触れて大まかなプロットを頭にいれて読むといいと思います。
日本だと文学史を体系的に掴める著作というのは少ないです。通史的なものは多いですが、例えば丸谷とか加藤周一のとか、著者の価値評価や規範的なフレームを孕んだ俗流エッセイ的通史が多いです。
他方で高校の国語便覧とかでも、通史的な理解には比較的便利です。伊藤整の『日本文壇史』とか結構いいですが、時代は大正くらいまでに限定されます。
ただ、作家単位で評伝、作品論、作家研究を調べるのが近代以降の文学研究では王道で、通史的解釈を批判的に検討できるようになります。
海外文学も国別の通史的な著作は日本語で調べるとあったりして参照に便利ですが、まず作家単位の研究が無難です。


コメント